医事法
弊事務所は医事法の分野においては、患者又は医師に対して医療過誤や医療事故に関する法律相談を提供し、慰謝料や損害賠償の請求又は防御を代理いたします。
医事刑法
近年、医師が刑事事件の被疑者となることは珍しくはありません。こういった刑事上の責任は、医師の判断がしばしば生と死に直接関係することから生じます。
同様に医師の刑事責任は、患者や医療保険に対して診療報酬を請求する場合に発生することがあります。
実務上重要な医師の犯罪行為は以下の通りです。
- 過失致死又は傷害(刑法第222条、第229条)
- 故意殺人(刑法第212条)
- 傷害(刑法第223条)
- 医師による安楽死
- 不救助罪(刑法第323c条)
- 医療報酬詐欺(刑法第266条)
- 背任(刑法第266条)
- 医師の守秘義務違反(刑法第203条、第204条)
診療報酬詐欺
医師の刑事責任の中には具体的な医療行為に起因するもののみならず、診療報酬の請求に際して生じるものもあります。昨今検察は刑法第263条に該当する診療報酬詐欺事件の捜査に力を入れています。典型的な例としては、架空の治療行為についての費用を医療保険に請求することが挙げられます。こういった場合に、実際に刑事罰の対象となるような詐欺罪が成立するか、しばしば明確でないことがあります。
診療報酬詐欺に関する弁護士実務においては、数多くの法律問題や論点が存在します。特に、診療報酬詐欺においては、患者、医師、医療保険、時には薬局が関係し、その相互関係が不明瞭であることから、そもそも当事者の誰が錯誤に陥っているのか、詐欺罪の構成要件である処分行為を行ったのは誰であるのかが問題となります。
診療報酬詐欺の容疑がかけられた被疑者に対する弁護活動の中心は、このような複雑な当事者の関係の中で、被疑者に詐欺罪の故意が認められるか、という点にあります。この要件は個別事例の具体的態様で判断されます。実際には、個別具体的な被疑事実を基に、初回相談でこの論点を確認し、それにより大抵の場合一時的な事件の評価をすることができます。
詐欺罪はその重要性や違法性の高さから、重い刑罰が科せられています。法定刑は5年以下の自由刑もしくは罰金です。詐欺を業として行う等、犯情が特に重い場合は、10年以下の自由刑が科せられます。
刑事罰の他に、保険医の認可の取消し、医師免許の剥奪、営業停止の処分も科せられる恐れがあります。
同意の欠如
医療行為は通常、傷害罪の構成要件に該当するため、患者の同意によって初めて正当化されます。従って、当該医療行為によって生じる危険や代替可能な医療行為を説明し、早い段階で同意を得ることが必要不可欠です。
患者の同意は必ずしも明示的である必要はありません。同意の存在は個別具体的に判断され、例として患者の意識が無い場合のように、推定的同意によっても医療行為は正当化されます。この場合、患者の意識があったのであれば、同意していたであろうことが推定できるか否かが判断されます。病気もしくは怪我を負った患者は通常、治療を受けることを望むため、大抵の場合は「はい」が答えとなります。
実施する医療行為についての説明が不適切である場合、患者が全てのリスク又は代替可能な医療行為について適切な説明を受けていたら、当該医療行為について同意していたか否かが問題となります(仮定的同意)。
具体的な同意の要件は非常に高く設定されています。一般的に患者の症状が軽ければ、同意の存在に対する要件は重くなります。弊事務所では、依頼者が医療提供者として過失傷害(刑法第229条)や過失致死(刑法第222条)の容疑がかけられている場合、その状況を事前に的確に分析、精査いたします。
刑事事件については、早い段階で弊事務所にご相談下さい。